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地方自治体の経営について考えること (2)

この半年間で、自分の生活を見直すにあたり、非常に参考になった本がある。それは「カリスマ体育教師の常勝教育」、「成功の教科書」という本である。原田隆史先生という元中学校の生活指導で実績を上げた方の本であるが、大人にも子供にも参考になる本である。きちんとした生活習慣を身につけることは、子供だけではなく大人にも必要なことである。また、計画作成の具体的なノウハウも満載である。是非、ご一読をお奨めする。佐賀市では大和町のイオンショッピングセンターの中の本屋にしか売っている可能性は無いと思うので、インターネットで注文されると便利である。
中小の地方都市ではすでに本屋に置いてある本の種類が非常に限定されてきている。情報格差である。佐賀市では数年前に大きな書店が撤退したが、それ以後、本屋にあるビジネス書が極端に減った。市民は文句を言うが、これはお門違いである。なぜなら、本が売れないから撤退したのであるから、本を買わない住民に原因がある。
難しい本はどんどん売れなくなっているそうで、私も出版社を探しているときに、「暴露ものか芸能人の書いた本でもないと、なかなか売れないんですよ」と言われた。出版社の経営も厳しいところが多いそうだ。日本人の知的レベルが低下しているのだよと言われたような気がして、悲しい限りである。大人が本を読まないのだから、子供たちに本を読みなさいと言っても、それを定着させる学校の苦労は並大抵のことではないと感じた。
さて、今回は、合併前の佐賀市役所が置かれていた状況を少し詳しくお話した後、今後は、自治体にも格差社会が到来していることをお話したい。

1. 佐賀市の人口の状況
佐賀市の人口は平成7年の国勢調査で17万1千人と過去最高を記録した後、減少を始めていた。平成12年には16万8千人となり、その後も緩やかに減少を続けている。
今の時点でも自然増(出生者数―死亡者数)が続いていると思うが、減少の大きな理由は社会減(転入者数―転出者数)が自然増を上回っていることであった。自然増は一貫して縮小しているが、社会減が1995年から再び増えてきたのである。これが理由だと言うものははっきりしないが、周辺の都市計画を持たない町村が無秩序に宅地開発を許容していることと、不況により佐賀に働き口が減ったことではないかと思う。
この社会減が縮小したとしても、まもなく佐賀でも人口の自然減が始まる。佐賀市は昨年合併して、現在の人口は20万人台になっているが、2030年には16万人台になっていると予測される。そしてそのときは、65歳以上の方の割合は、30%近くになっていると予想されている。今の割合の倍ぐらいの数字である。

2. 佐賀市役所の税収の推移
前回、人口が減少していけば税収が低下するとお話したが、それは高齢化により働く世代が減少することも影響する。合併前の佐賀市についても推計であるが、生産年齢人口は2000年を11万人とすると、2030年には約8万人まで低下している。
住民税は、所得に関係なく一律に負担する「均等割」と所得に応じた「所得割」の二種類からなっており、働く人が減れば「所得割」は低下する。また、人口が減り、しかも高齢化していけば、新たに家を建てようとする人は減る。新たな経済活動が盛んにならない限り、土地の需要は減るので、土地の値段は下がる。そうなると、固定資産税は減少していく。
佐賀市役所の税収見通しは、これからじりじりと低下していくと予想していた。税収のピークは、平成9年の224億円であり、その後は一貫して低下していく。
ただ、昨年、定率減税の見直しが行われており、その分が反映されると多少減収のスピードがなだらかになるかもしれない。

3. 佐賀市役所の福祉関係経費の推移
これから一貫して増えていくのが、この福祉関係経費である。
佐賀市役所の場合も、平成2年度の福祉関係経費は42億円であったが、現在では、90億円まで増加している。そして今のままなら、平成21年頃には100億円前後となると予想している。
平成2年頃と比べると介護保険などの新たな仕組みが導入され、配色サービスなどの事業も始まった。皆さんご存知のように平均寿命はどんどん延びていくが、特に75歳以上の後期高齢者となると医療費が非常にかかるようになる。
いずれは、65歳から74歳までの前期高齢者の数を後期高齢者の数が上回るようになり、そうするともっと医療保険や介護保険、福祉サービスに用いている税金はかかる。
実はこれを減らすのは、政治家としてはとても難しい。私は、市長のときに敬老祝い金などのバラマキ福祉を大幅に切り込んだし、配色サービスなども所得制限を設けたが、政治家は福祉サービスを切り込むのが難しい。なぜなら、選挙を考えると、投票率の高いお年寄りの世代を意識せざるを得ないからである。裏を返せば、子育て世代などは投票率も低く、日ごろから政治への参加も少ないということである。
ともかく、確実に福祉関係経費は増えていく。

4. 佐賀市役所の借金返済の予定
そして、これからは借金の返済額が増えていく。
これは多くの自治体に共通する問題であるのだが、平成2年にバブル経済が崩壊して後、10年以上、公共事業を中心とした景気回復対策が行われてきた。
公共事業を行うお金は借金でまかなってきたのだが、結果として、借金残高が急激に増えた。平成3年の佐賀市の借金残高は244億円だったのだが、平成11年には500億円を超えていた。その後、新しいゴミの焼却炉の建設に必要な200億円のうちの150億円を借金でまかなったこともあり、平成15年には700億円となった。しかし、ようやく財政改革の効果が出てきて、平成16年度から借金を減らすことが出来、670億円台まで減少している。これは、18年ぶりのことであった。
ただ、残高が減り始めたと言っても、返済のピークはこれからである。焼却炉の借金の返済が始まる平成18年度からが大変であり、平成10年前後は毎年50億円前後であった借金返済額が、70億円前後に急増する。

5. 政府からの補助金の見通し
4.までに述べたように、税収が減る一方で、福祉関係経費や借金返済の額が増える。団塊の世代の退職金の支払いも増える。ところが多くの自治体は、「深刻な財政危機だ!」と言いながらも、必死に行政改革に取り組んでいる印象は受けない。おそらくそれは、国が何とかしてくれると思っているからである。そうでなければ、未来の子供たちへの責任を取ろうとしていないのか、先を見る力が無いとしか言いようが無い。
ところが、政府は大して当てにはできない。すでに自分の借金が莫大なものがあるからである。770兆円を超えていると言う。資産を引いた純債務で見れば多少少なくなるが、この資産がとこまで借金返済に回せるものかと言うとかなり疑わしい。
地方交付税交付金は、今後も現状より減ることはあっても増えることはないし、公共事業に関する補助金は確実に減っていく。そして、生活保護の負担を地方に肩代わりさせようとするような負担を地方に押し付ける動きはこれからも続いていく。この動きは、県の補助金についても同様であり、国と同じように一方的に補助金を打ち切ったり、補助率を下げてたりすることが続出するだろう。
市町村から見ればとんでもないことではあるが、しかし、国に金が無ければどうしようもない。

6. 地域を支える産業があるか?
国が当てにならないとしても、その地域を支える企業活動があれば、何とかやっていける可能性がある。地方自治体としても一定の税収が期待できるし、住民にとっても働き口があるからである。
現在、このような条件を満たしている地域はいくつかある。首都圏やトヨタ系の企業の本社が立地している自治体、優良な企業の主力工場がある自治体などである。しかし、日本全国で見てみるとその割合は少ない。九州や東北、夕張市が破綻した北海道などでは、本当に一部である。
佐賀市の場合は、地域を支える主力部門は建設業であった。しかし、佐賀市外でも十分にやっていける競争力を持った会社は少なかった。労働人口で見ると建設業は全体の一割であるが、それに関連した卸などの資材関係など幅広い分野が関連している。しかし、公共事業費は、ピーク時の半分であり、今後も、毎年縮小していく。
これに代わる産業として、観光と食品加工業の振興に力を注いでいたところであったが、多くの雇用を支えるところまでは行っていなかった。
この地域を支える産業があるかどうか、それも将来にわたってその地域を支えていく力があるかどうかが、これから自治体が栄えるかどうかの大きな決め手となる。

7. すでに大きな自治体間の差が開いている
長い間、「国土の均衡ある発展」が日本のスローガンだった。どういう意味か良く分からないが、この言葉によって手厚い地方交付税制度があったと思うし、地方に厚く公共事業費が配分された。
しかし、現実はどうか。そもそも、どのような状態が「均衡」ある発展といえるかが人によってまちまちであるので、比較はしにくいが、少なくとも「差」ははっきりある。
例えば、月給である。一番高い東京都では43万円であるが、最下位の沖縄では27万円である。また、代ゼミの資料によると、大学入試センター試験の平均点でも大きな差があり、第一位の東京都は713点であるのに対し、最下位の宮崎県は591点である。
「格差」という言い方は、改めるべき「差」という意味であるので、地方から見れば格差と言えるかもしれないが、差ははっきりある。

8. 自治体も「格差」社会に
そして、今後はこの「差」が開いていくと思う。佐賀市が行ったエスプラッツ建設(第三セクター方式の商業ビル建設)のような無駄な事業を行わないとしても、多くの自治体は益々窮乏化していく。
すでに述べたように、人口減と高齢化の進行により、税収が減る一方、福祉関係経費が増えるからであり、頼みの国も膨大な借金を抱えているので、交付税交付金や補助金を減らしてくるからである。それで、人口の増加も続き、地域を支える産業もある都市部の自治体を別とすると、多くの地方の自治体は、益々、財政が厳しくなるのである。

9. 解決策はあるが、実現は極めて困難
では、解決策は無いのかというと、方向性としては簡単だし、「ある」といえる。しかし、極めて実現が難しい。
これはお金の無い自治体に共通して使える方向であるが、まず、急いで行財政改革を行い、運営を徹底的に効率化し、前向きな投資を行うための財源を作ることである。
ここでは「急ぐ」ということが大事なポイントである。なぜ「急いで」かというと、黙っていれば税収は減り、福祉関係経費は増えるので、急いで経費削減を行わないと、また資産の有効活用を行わないと、いつまでたってもお金が生み出せないからである。
私の場合には、急いでやったので、貯金が100億円ほどになった。このお金を借金返済に一部を使った上で、残ったお金を子育て支援と教育、観光と食品産業の振興に集中投資しようと考えていた。
ただ、市民の皆さんは、我慢し切れなかったようであるが。
この財源が出来たと仮定して、次に取り組むべきことは、将来の地域を支えるものに重点的に投資をすることである。更には、重点投資をすると決めたことに、粘り強く、10年でも20年でも愚直に取り組むことである。
ここで難しいことは、どの分野に重点的に投資するかと言うことである。まず、金の無い自治体が幅広くいろんな分野に投資すると、一つ一つの投資金額はたいした金額ではなくなってしまう。中途半端な投資では、ライバルの自治体と競争に勝つことも出来ず、なかなか効果が出てこないからである。
その上で、どの分野に重点的に投資するかを決めることが極めて難しい。
意味は二つある。内容を決めることの難しさと、実現することの政治的難しさである。将来にわたって地域を支える分野が無いかを決めることがとても難しいことは、皆さんすぐにお分かりになると思うが、たとえこれが決まったとしても、それを決定することが政治的に極めて難しいのである。
これは私の経験でも言えるのだが、選挙に勝つことを意識すると、なかなか特定分野に重点投資すると言うことを、政治家は言いにくい。私の公約でも子育て支援と教育を最重点としていたが、福祉関係者からは、福祉を軽視するのかと言われた。環境問題は大事ではないと思うのかと言われた。
私からは、その分野の投資はゼロにしますとは一言も言っていないのだが、それぞれの分野で仕事をしている人たちから見れば、自分の関係分野が一番でないと気がすまないようである。
将来地域を支える分野がどこかを決めること、そして、それについて住民や関係者に納得してもらうことは、極めて難しい。この課題を乗り越えられたとしても、それを10年も20年も愚直に取り組めるかということも困難なことの一つである。地域を支える分野などは簡単に育つものではない。
九州には黒川温泉と言う人気の温泉地があるが、この温泉もかっては無名の温泉地だった。しかし、黙々と広葉樹を植え、露天風呂を作り続けてきた。その上に、温泉手形と言うソフトが成功して今の繁栄があると思う。
しかし、住民はすぐに成果を求める。小さな成果を出し続けながら、特定分野に長期間投資を続けることは並大抵ではない。
多くの地方自治体の首長、議会、住民の関係に照らし合わせてみると、その地域が相当に追い込まれて、意識が変わるまでは、このようなことは出来ないところがほとんどではないだろうか。
今改めて思うのは、「その地域が栄えるかどうかは住民の総合力で決まる」という言葉である。
2006年6月23日
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