|
仁愛保育園見学記録 (平成18年7月10日午前8時20分から12時半まで)

原田隆史先生(東京教師塾塾長 「カリスマ体育教師の常勝教育」、「成功の教科書」等のベストセラーの著者)のご紹介で、福岡市城南区にある仁愛保育園を見学してきた。
この仁愛保育園、数ある福岡市の保育園の中で最も希望者の多い保育園だそうだが、森信三先生の唱えられた「立腰教育」を教育の大方針に掲げられた保育園としても有名である。
頂いたパンフレットに書いてある教育の方針を抜粋すると、
仁愛目指す人間像
- 人に迷惑をかけない人になろう。
主体性を持ち、自分の行動に責任を持って生きようとする人柄
- 人に親切にできる人になろう
自分の余力を人のために使おうとする人柄
- 自分からする人になろう
主体的に行動し、自分の力を発揮しようと努力できる人柄
仁愛取得目標(調和の取れた人柄の土台づくり)
- 腰骨を立てる(立腰)
心と体をととのえる意志力、性根、主体性の土台
- 躾の三原則
- 挨拶は自分から先にしよう
明るい人間関係を開く土台
- 返事は「ハイ」とはっきりしよう
素直な行動が身につく土台
- 履物をそろえ、イスを入れよう
行動に責任を持つ、けじめの土台
・・・・根を養えば樹はおのずから育つ・・・・
二度とない人生を 自分らしく生き抜いていく 土台を「今」培う
0〜6歳の乳幼児は人間形成の原点に当たる時代。自分の土台となる躾を、園と家庭との共通認識の下に、大人が手本となり、一緒に実行する生活の積み重ねをもって、自然に身につけていくことができます。
|
また、「職員の基本姿勢」についても抜粋しておく。
|
・・・・・・・・「職員の基本姿勢」・・・・・・・・・・
○ 職場の三原則
- 場を清める(空間の秩序)
- 時を守る(時間の秩序)
- 礼を正す(人間関係の秩序)
○ 「愛敬」の仁愛精神、職員の心得10ヵ条
- 腰骨を立てる。
立腰と躾の三原則、職場の三原則を職員自らが実践し、手本を示しながら保育する。
- 笑顔で明るい挨拶を自分から先に
- 目線を合わせて話す。
- 言葉使いを丁寧にはっきりと。(幼児語を使わない)
- 園児の名前は「さん」付けで呼ぶ。
- 常に子供たちとは一緒に活動し、ともに学ぶ姿勢を忘れない。
- 自分の失敗ははっきり認める。
- 長所を強調し認め、反復指導で忍耐強く導く。
- 園児の問題行動の究明は、まず保育者や保護者のあり方を反省する。
- 生かし生かされに感謝の心を持ち、今に全力を出す。
|
原田先生から仁愛保育園の教育の素晴らしさを聞かされていたので、期待して見学に伺ったのだが、想像をはるかに上回るものだった。
朝、8時20分に園に着いた。玄関にいた保育士さんに挨拶した後、園児の登園風景を見ることにした。
その光景に驚いた。写真のように、保育士は子供と目線を合わせるために床に膝をつき、目線を合わせた後で、「おはようございます」と大きな声で挨拶の手本を見せる。子供たちもきちんと姿勢を正し、「おはようございます」と挨拶をする。これは、2歳や3歳の幼児に対しても同じように行われていた。
保育士さん(以後、「先生」と呼ぶ。先生と呼ぶに値すると思うからである)が、保護者に対しても、私のようなお客に対しても、大きな声でにこやかに挨拶する。それも先生が必ず先に挨拶してくる。職員の心得10ヵ条の第一条と第二条のとおりである。子供たちが、うまく挨拶できなくても、怒らずににっこり笑って指導する。

月曜日の9時10分からは、朝会がある。それまで自由にグランドで遊んでいた子供たちが、朝会の準備に入りますと声がかかると、さっと片づけをはじめ、先生が膝を高く上げ元気に足踏みしているのに合わせて、整列する。

そして、園旗と国旗の掲揚を行う。

子供たちは前に倣えをして前の人との間隔をきちんととるだけでなく、横の列との間隔を測る。自分の位置関係を確かめることをしている。
整列のときは、腰を立てる。先生は、子供たちに「○○さん、腰を伸ばして」とか、「目は、先生を見て」とか、気をつけのときの足の開く角度を靴に手をかけて指導している。
下の写真の、三歳の男の子の背筋を見ていただきたい。

そして、このあと元気に歌を歌い、クラスごとに行進してグランドを駆け回る。お客が来ていると、クラスごとに整列して挨拶をすることになっており、朝会の邪魔にならないようにと木陰から見学していた私のところにも、各クラスが次々とやってきて、挨拶をしていく。
おそらく、社会性を身につけさせるためであろう。
朝会後は、年長さんは坂道をダッシュして教室に戻る。このときも、スタートラインに一列に並んでいないと、「○○さん、左足を一歩後ろに」と、きちんと指導している。

その後、私は年長組(5歳児)の授業を見学した。来年から小学校に上がることもあり、午前中は、机とイスを使って勉強をしているようであった。

まず、驚いたのが、机とイスが一直線に並んでいることである。それは見事なもので、少しでもでこぼこがあると、先生が「○○さん、イスがずれてます」と指導する。
そして、午前中の授業が始まる前に、今日の当番の五名が、お手洗いのスリッパがきちんと揃っているか、靴が靴箱に揃っているかを確認して、並べなおす。下の写真のように、きちんと揃っているのだが、それを当番の子供が真ん中に来るようにそろえなおしているのである。それは、見事なものであった。
 
そして、いよいよ授業である。最初に10分間ほど静かに目を閉じている時間をとっていた。
子供たちは腰を立てて姿勢をよくすることを目標にしているようだが、先生の目を閉じて姿勢を正すようにとの指示があると、とたんに教室の雰囲気が変わる。何かピーンと張り詰めたものがあり、禅寺の道場のような凛とした雰囲気である。5歳の子供がこんな雰囲気をかもし出すことができるのかと思い、感動した。
先生は、一人ひとりのイスの後ろから子供たちの首筋に手をあてて体調を確認し、そして、腰が立っているかどうかを指導するために、腰に手を当てる。
すこし、背中が曲がっている子供もいるが、殆どの子供は素晴らしい姿勢を持続している。
その後、教室で、宮沢賢治先生の「雨ニモ負ケズ」の詩と、「腰骨を立てる」の詩を朗読する。

先生が、今日の天気を聞く。子供たちに当てると、子供たちは立ち上がって返事をするが、答える前にイスを中に入れるのである。大人でもこんなことができる人は殆どいない。
先生が「ありがとうございます」と言うと、子供たちは「どういたしまして」と答える。
次に、先生が一人ずつ、フルネームで呼びかける。「○○(姓)□□(名)さん、元気ですか?」子供は、「ハイ、元気です」とか、「ハイ、頭が痛いです」ときちんと答える。返事のときに目を合わせない子供がいると、目を合わせるように指導する。
その時に他の子供が姿勢を崩すと、すかさず先生が、「○○さん、動かない。他の人に失礼です」と指導する。
休憩後は、「ハ―メルンの笛」という絵本を皆で声を出して読んでいた。もちろん漢字混じりである。石井式漢字学習法を取り入れており、読み終わった後、先生がフレッシュカードという大きな漢字のカードを出して、皆で読み方を声に出して確認していた。小学校2年生レベルの漢字も軽々と読んでいく。
その際も、先生は、子供たちに先生の目を見て話を聞くように再三指導していた。
 
その後、園長室で石橋園長先生のお話を伺った。
森信三先生の立腰教育と出会ってからの30年にわたる苦労など、いろいろなことをお聞きした。大変に参考になることばかりであった。この保育園であれば、福岡市で最も人気があるのも頷ける。今までいくつもの保育園や幼稚園を見学してきたが、文句なくナンバーワンである。
この園を見学して思ったのは、日本の社会がどのような社会を目指しているのかを改めて考えされられたことであった。子供たちはどんどんわがままになっていて、他人の迷惑を考えなくなっているが、それでよいとするのか、それとも、他人の迷惑にならないように気をつけながら行動するのがよいと言う社会にするのかである。後者が良いと思うのなら、そのように教育しなくてはならない。
森信三先生の教育理論はもっと深いのだが、ご関心のある向きは、その著作をお読みいただきたい。インターネットで検索すれば、いくつか出てくるし、リバーホエールという会社が先生の本を販売している。
また、卒園するまでに、給食も25分以内で食べ終わるように仕込んでいるそうである。なぜなら、小学校では時間内に食べ終えなければならないからである。このようにきちんと机に座って、静かに人の話を聴くことを仕込まれた子供たちが学校に上がってくれば、小学校はどんなに助かることであろうか。多くの小学校では、少なくとも一学期の前半は、子供に静かに座って人の話を聞かせることに力を注いでいる。(佐賀市では、教育委員会が保育園と連携を取り、5歳児の後半は、机に座って静かに学ぶことを教えるように要請していると思う)
よく、このように厳しく躾けると子供の自主性が育たなくなると言う人がいるが、それは違っている。他人のことを思いやることと、迷惑を考えることと、自分のことを自分で磨いていくことはまったく別のことだからである。
福岡市役所がこの仁愛保育園をどのように評価しているかは知らないが、他にも、高取保育園など、日本有数の保育園がある。福岡市の大きな財産である。これを生かしていくためには、良い保育園のある地域の小学校には、飛びぬけて優秀な校長を送り込むと、幼児期の良い教育のよさがさらに伸びるに違いない。
仁愛保育園の存在を多くの方に知ってもらい、それに続く園や小学校が増えることを強く願うものである。
2006年8月2日
|