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地方自治体の経営について考えること (4)

今年の夏は暑かった。18日に九州に来た台風は、一日以上九州に居座った。特に、高気圧にはさまれて台風が動かず、佐賀県とは有明海を挟んでお隣の熊本付近には長いこと滞留していた。滞留していた割には、思ったほどには雨は降らなかったが、改めて、九州は台風銀座だと言うことを実感した。
さて、私の出版予定の本の題名が決まった。「日本を二流IT国家にしないための14カ条」というタイトルで、9月25日に日経BP社から出版される。自治体のIT政策に絞った内容であるが、行政や日本の社会の問題点も抉った自信作である。もちろんゴーストライターなどは使わず、270ページにわたって書き下ろした。行政関係者や政治、行政に興味のある方は、是非、お読みいただきたい。佐賀の本屋に並ぶかどうかはわからないが。
1. 常に効率化の努力が必要なわけ
そもそも行政改革とはそれ自体が目的ではない。何らかの上位の目的があって、それを達成するための手段に過ぎない。
私の市政では、教育と子育て支援、観光と食品加工行の振興のために必要な事業費の確保が目的であったが、そもそも論として、次の基本的な視点を忘れてはならない。それは、市役所の全ての仕事は、市民の皆さんから頂く貴重な税金を使っているということだ。
だから、全ての政策は、無駄なく行わなければならないし、常に効率化の努力が求められるのである。「行革、行革、と言い続けると職員が疲れる」との意見があるが、税金を使って仕事をしている以上、企業のような倒産の危機がなくても、常に効率化の努力をしなくてはならないのが行政本来のあり方ではないだろうか。
これは、昨年から自分でお金を稼ぐようになって、その大変さを感じて以来、この考え方は益々強いものとなった。役所と言うのは、強制的に税金が収入として入ってくる。民間と比べると、本当に役所は楽で、かつ税金を納めていただいていることは本当に有難いことであると。
また、今後は、多くの自治体では財政難となり、これまで同様のサービスを提供することはできなくなる。いろんなものを削る必要が出てくるし、場合によっては増税という選択も出てくるが、そのときに、役人がまず自ら痛みを受けているかどうか、行政が無駄なく効率的に行われているかどうかと言うことは、納税者からするととても大事なことになる。自分自身の役人としての理念のひとつは、「士は人に先んじて憂い、人に遅れて楽しむ」であった。しかし、今の行政は、そうなっていない。
役所には長い間の慣習で役人は当たり前だと思っている既得権益や、非効率な体制が沢山あるが、しかし、現実にそれを改めるには相当の抵抗がある。地方に行けば行くほど、役人の労働組合は政治力がある。外部からきた市長が抵抗をはねのけてそれを改めるのは、とても骨の折れることである。直ぐ変えられるものは別として、政治的なハードルの高さを判断しながら、重要なものから手を付けていくことになる。
2. 簡単に改められるもの
佐賀市営ガスの売却などの案件は簡単には進まなかったが、役所の仕事で、民間企業の相場から見ておかしなもので直ぐに改められるものはいくつもある。今回は、それについていくつか例示しておきたい。
(1) 電話代の節約
これは、特に市外電話が多いところに当てはまるが、意外とNTTだけを使っているところが多い。佐賀市役所は、IP電話のフュージョン社(社長は佐賀市出身の方)などの電話を使っていたし、佐賀広域消防局は、九電系の電話会社を使っていた。これに対抗して、NTTも安いプランを打ち出してきたが、電話の利用実態を調べて、組み合わせていけば、電話代は下がることが多い。
(2) コピー用紙の購入単価の見直し
佐賀市役所は当時、紙代が、福岡市役所などと比べてかなり高かった。いまは、同じ水準まで下がったが、市役所同士で、何をどのような値段で購入しているかを情報交換すると、業者との交渉のときに役に立つ。
また、当時の佐賀市役所はB4,B5、A4と紙のサイズがバラバラであった。そこで、基本的にA4で統一した。そうすれば、コピー機もファックスも証明書発行用のプリンターもA4サイズのみの対応のもので済む。
(3) 事務機器の購入若しくはリースはまとめて発注する
佐賀市役所は、例えばコピー機などは、部や課ごとに機種も違い、バラバラに発注していた。そこで、ファックス機能とプリンター機能ももつ複合機にし、機種を統一し、台数をまとめて入札にかけた。かなり、安くすることができた。企業では当たり前のことであるが、役所ではこのことすら出来ていないところが多い。
佐賀市役所の場合は、ソータもついていない機種を導入していた。ソータをつけ、お茶は職員が自分で入れるようにすれば、アルバイトを雇う必要は半減する。
更に検討するなら、県レベルで発注件数をまとめ、さらに単価を下げると言う手もある。そこまで無理なら、隣の町と共同して数をまとめる手もある。
(4) できるだけ短期借り入れをしない
市役所の事業は税金で行っているが、年度の当初に全額まとめて入ってくるわけではない。納期が分かれており、少しずつ入ってくる。しかし、事業を行う部門はそんなことはお構いなしで、自分たちの都合でお金を使おうとする。そこで、お金がないときは、銀行から短期借り入れをする市がある。
佐賀市役所では、できるだけ資金繰りを考え、金を手当てする必要があるときも、市役所の預金をまわしていた。今は、金利が低いからその効果は少ないが、預金の利子と借り入れ金利は、やはり差がある。このようにすべきであることを提案してくれたのは、民間企業の取締役経験者であった上野前収入役である。企業では、売り上げがいつ入ってきて、資金繰りがどうかということをいつも気にする。役所にはその感覚がないことに驚いたそうだ。
合併の対象となっていた富士町では恐ろしいことが行われていた。農協に十分な貯金があるにもかかわらず、貯金の利子より高い金利のお金をわざわざ農協から借りていたのである。理由は不明だが、税金の無駄遣いである。
(5) 職員の旅費
これもすでに改めたことだが、平成11年当時、私が佐賀駅から博多駅まで日帰りで出張すると往復7000円の旅費がついていた。特急の利用ではあるが、片道33分で割引切符は往復2000円であった。日帰りで出張すると5000円の儲けが出ていた。
計算方法はこうである。JRの正規料金は往復4000円で、それに「日当」という意味不明のものが3000円ついていたのである。
どうにも落ち着かなかったので、まず、運賃は割引切符を基本にするようにさせた。その次に、日当を廃止し、地下鉄にも乗るだろうから500円か1000円の事務費をつけるようにしたのである。この「日当」とは、弁当の意味なのかどうかはわからないが、電車で33分でいけるところには必要ない。
同様に、二泊三日で東京に出張したときも何万円もの儲けが出ていた。航空運賃は割引切符が前提ではないし、日当とは別に食卓料として3000円以上の夕食費まで出ていた。しかし、これも、気持ちが悪かったので、実費に近い形に変えた。佐賀市は財政がきつかったので、幹部も自由席料金を基本とした。
こういった改正は、浮いた金額としては何百万円と言う単位であるが、学校に廻せばかなり使い勝手のある金額である。
これを削るときに職員の反対もあった。この浮いたお金で、皆で懇親を深めると言うのだそうだが、そんなものは自分の金でやればよい。
なお、旅費の振込口座は給与の振込口座とは別にできるようにしてあった。へそくりが作れるのである。
(6) 自己都合退職者への勧奨扱いの退職金支給を是正する
これから多くの自治体では、団塊の世代が退職するときの退職金の支払いが多くの負担となる。佐賀市役所の場合は、職員が普通に勤めると2500万円程度の退職金にはなる。これは、佐賀の地場のどの企業の退職金の相場よりも良いと思う。
これをどうするかという以前の問題があった。違法行為ではなかったかと思うのだが、平成11年当時、佐賀市役所は、自己都合退職の職員に対しても「勧奨扱い」として割り増し退職金を支給していた。最初はこのようなことをしているとは夢にも思わなかったのだが、自己都合退職職員の書類をじっくり見ていて気がついたのである。
市長就任後、数年はたっていたと思う。そこで、早速、今後はこのような違法行為は決してしないことを言明した。その後にもめたのが、現水道局長が次長のときに退職したときのことである。自己都合退職なので勧奨退職扱いと比べると数百万円少なかったのではないかと思うが、水道局の労働組合は、割り増し退職金を支給すべきだと団体交渉するという騒ぎになった。当時の福田局長が頑としてはねつけてくれた。当時は、九州の一部の自治体でこのような慣習があったようである。
また、当時は、退職するとなぜか二号俸、その後は一号俸、退職金が割り増しされていたが、これは、今は、廃止されていると思う。
(7) 職員厚生会への出費
これは、有名な話になっているので、簡単に説明するが、佐賀市役所も職員の結婚や不幸ごとには、厚生会からお金が出ていた。半分は税金である。レクリエーションの費用なども厚生会から出されていたが、同様に税金が半分である。
数千万円の税金が出されていたので、かなり削った。昨年の公約では、このお金は全廃するとしていたが、今はどうだろうか。福祉や教育の予算を削る前に、このようなものは直ぐに廃止しなくてはならない。役人は、自ら身を正さなくてはならない。
(8) 職員駐車場の有料化
佐賀市役所の場合には、職員駐車場が無料だった。市役所から少しはなれたところにあるが、地元の企業の話を聞いてみると、車で通勤している人は本人負担で駐車場を借りていると言う。これも、反対はあったが、有料化した。学校の教員用駐車場も有料化使用としたが、どうだろうか。
有料化以前の問題として、朝、子供たちが徒歩で通学している中を、教師が車で学校に乗り入れる姿を見かけたことがある。PTAが当番でパトロールしている中、教師がそのようなことをすべきではない。
(9) 電気代、水道代の節約
佐賀市役所は、行政としてESCO事業と言う省エネ事業を導入したパイオニアであった。今では当たり前になってきた事業だが、平成12年当時は、名前すら認知されていなかった。
これは、単なる精神運動で節電、節水使用というのではなく、いつどこでどのようにエネルギーが消費されているかをきちんと測定したうえで、デマンドコントロールと言う手法など、いくつかの手法を用いて科学的に節約するものである。太陽光発電などよりも、はるかに実用的である。
水道も、節水コマすらつけていない自治体が多い。省電舎のような省エネコンサルタント会社に作業をしてもらうと、古い庁舎ほど大きな効果が出る。
(10) 公用車の共同利用
市役所には、各課に公用車がある。これが余っていることが結構多い。かつては、それぞれの課で管理していたので、ある課はいつも余裕があり、ある課はいつも車の手配に苦労していた。そこで、共同管理としたのだが、何台かは必ず削減できる。車も、基本的に軽自動車とすれば環境にやさしい。初めて管理を共同化したときに、税担当課でオートバイがほとんど使われいないことが判明した。冷蔵庫に古い食材がそのまま残っているように、制度を見直すと、色々と無駄が見つかる。
思い出すままに書いていたら、10項目を超えてしまった。これ以外にも、いくつもあるが、今回はこの辺にしておきたい。次回は、色々と抵抗があるが、効果の大きなものについて、いくつか説明したい。
最後に改めて言えることは、財政難で大変だと言いながらも、直ぐに改めるべきおかしなことが改められていない自治体は相当あるということである。税金の無駄遣いを監視するのが本来の仕事である議会の活躍に期待したい。
2006年8月31日
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