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地方自治体の経営について考えること (5)

季節はすっかり秋である。佐賀では、11月にインターナショナル・バルーンフェスタという熱気球大会の世界大会が開催される。佐賀市で最大の集客力を誇るイベントである。今年のお天気はどうだろうか。
1. 本の営業活動
今日は、久しぶりにこの原稿を書いている。最近は、9月25日に日経BP社から出版した「日本を二流IT国家にしないための14カ条」というタイトルの本のPRで忙しかった。
著者としては、本が本屋に並べば終わりではない。その前に、やることがいくつもあることを出版社から教えられた。まず、新聞や雑誌の書評担当者へのお手紙作戦である。新聞や雑誌の書評欄に取り上げられるかどうかは、本の売り上げに致命的な影響を及ぼす。書店も、毎日、書評欄をチェックして、売り場の構成を変化させている。
出版社から書評の担当者へ本が送られているのだが、著者からも送ったほうが少しでも取り上げられる可能性がある。そもそも毎月、膨大な量の新刊本が出るので、書評担当者に読んでもらうだけでも大変な事だと思う。
それから、行政やIT関係者が読む雑誌への営業活動である。これも、まず私の本を読んでもらうことからはじめなくてはならない。果たして11月号の雑誌にどれだけ取り扱ってもらえるか。心配と期待が合い半ばしている。
最近、Web2.0という言葉がはやっているが、専門的な分野の本はインターネットの普及のお蔭で助かっている。私もアマゾンなどのインターネット書店での売り上げを期待している。特に、地方では私の本のような半専門的な本を書店が扱う可能性はかなり低い。その点から考えると、著書の価格設定は反省点である。できるだけ買いやすいようにと1400円の価格設定にしたのだが、アマゾンの送料が無料になるのは1500円以上(税込価格)からである。1500円未満の本については、アマゾンの場合、300円の送料がかかる。インターネット書店を主な販売ルートと考えるのなら、価格設定は、送料込みの総額がどうなるかで考えるべきであったかなとも思う。それに加えて、キーワード広告を打ったほうがよいのかどうかも、今、迷っている。今後のことも考えると、11月になってからやってみようかとも思う。
これ以外にも、たくさんの読者がいる個人のHPやブログで取り上げてもらうことも重要であると思い、いろんな人にお願いをしている最中である。インターネットを使った本の販売を主に考えるなら、本の制作の段階からインターネットの特性を踏まえたやり方が必要だと思う。二冊目を書く際の良い教訓となった。
それ以外にも、主要な書店の店長宛に手紙を書くなど、ともかくやることはたくさんあった。おかげさまで発売一週間は結構、アマゾンでは売れたようであり、売り上げが一時は300番台をつけることがあった。今は、相当に下がってきているが、内容については結構、良い評価を頂いている。題名の付け方、本のカバーのデザインなど、内容以外の要素も大事であり、その点も良い勉強をさせていただいたと思っている。
また、本屋さんの店頭にどのように置かれているかも見て回ったが、その際、本屋さんでもポップをつけて客の目を引くように努力をしているところと、あまりそういうことをしていないところの差を感じた。
佐賀駅前の本屋などはあまりそのようなことをしていない。福岡資本の店だが、大手の書店チェーンとの差を感じた。意外なのはTUTAYAであった。どちらかというと娯楽中心の品揃えだと感じていたが、佐賀の兵庫店には、私の本が置いてあった。このあたりは店長の判断なのだろうか。
2. 抵抗があるが行革効果の大きなものについて
今回は、抵抗があるが効果の大きなものについて、いくつか説明したい。
行政改革や財政改革を議論すると、どうしても単年度の収支を黒字化するために、できるだけ歳出を削減するという方向に行きがちである。それはそれで必要なことであり、徹底的にしなくてはならないが、他にも大事なことがある。それは、収入を増やすことである。
もちろん一番大事な収入の増加策は、産業振興である。経済活動を活発にして税収を増やすことが一番大事なことであるが、ここでは、それ以外のことについて説明する。
3. 収入の増加策
すでに説明したものとして、広告収入を増やすということがある。市の広報誌、スタジアムの広告などいくつもある。これ以外に、まず行うべきことは、市役所の持っている資産を見直して、収入を増やすことに使えないかどうかを考えることである。以下に、いくつかその方法を述べる。
(1) 企業局の売却
佐賀市役所の場合には、佐賀市営ガスを、三愛石油と地元プロパンガス業界が合同して設立した「佐賀ガス」に33億円で売却した。ほとんどが貯金に積んであり、このお金があるので、何とか佐賀市役所は予算を組めている。
ただ、赤字の市営バスなどは、売却できない場合も多いと思う。
(2) 遊休資産の売却
土地開発公社の塩漬け土地の問題が10年位前に問題になったが、市役所には、道路の用地の一部など活用していない土地がいくつもある。そのような土地が売却できるなら、売却を急がなくてはならない。なぜなら多くの地方都市は、土地の値段は今後も下がり続けるからである。
ただ、大都市部では、売却したほうが良いのか、それとも駐車場などに貸し出してキャッシュフローを生み出し、その管理に余剰人員をあてたほうが全体として有利なのかどうかをよく吟味しなくてはならない。場合によっては、時間貸しの駐車場にしたほうが、良いこともあるからである。
佐賀市役所の場合には、土地を大幅に整理した。この中には、佐賀球場の廃止などもある。8億円で売却できた。このお金も貯金に積んである。本来はとっくに取り壊されていなければならないものだが、私の前の市長は、新球場を建設したにもかかわらず、少年野球界の反発を恐れて、旧球場の取り壊しを先送りしていた。球場などは、本来は市の中心部に建設するものであるにもかかわらず、新球場は、農村部の田んぼの中にある。
(3) 施設の複合化による不要資産の創出
今後出てくる課題であるが、耐用年数が過ぎた施設を建て直す場合、他の施設と複合化して、不要になった土地を売却することである。また、人口減少時代には、必要な供給能力を下げることも可能になるので、遊休資産を生み出すことも可能になる。佐賀市の水道局は、浄水場を二つ持っているが、一つは不要である。即時、売却可能である。
(4) 職員駐車場の有料化
これは全ての市というわけではないが、職員駐車場が無料、若しくは非常に安いところが結構ある。その町の企業の水準にあわせて、職員の駐車場を有料にすることである。
(5) 税の徴収率の向上
次に考えられるのは、税の徴収率をあげていくことである。今までの行政の態度としては、税金を払うのは市民の義務で当たり前のことであると思っているからなのか、金融機関が空いている平日の9時から15時までしか入金ができなかった。
しかし、これからは、市民の皆さんからお金を頂くのだから、もっと払いやすくする工夫が必要となる。例えば、ペイジーというコンビにでも収納できる仕組みの導入である。首都圏を中心に導入が始まっているが、これなどは、大都市では相当に効果がある。
次に考えるべきことは、滞納整理の効率化である。佐賀市役所は非常に優れた滞納整理支援システムを導入していたが、滞納整理もやりすぎると問題がある。
例えば、取立てがきつすぎると、滞納している商店が倒産するかもしれない。倒産してしまうと、今後、税収が入ってこない。また、子供を抱えて生活が本当に苦しい人からも強引に取り立てることも、問題がある。
政治的にも腰が引ける市長もいる。それは、市民の反発である。本来、払わないほうが悪いのだが、これまできちんと取り締まっていなかったものを、急に強化することも難しい。滞納整理を本格化するなら、トップは腹をくくらなくてはとてもできないし、本当に困っている人への配慮も要る。
(6) 下水道接続の早期接続促進
地方では、現在も下水道を建設しているところが多い。法律上は、三年以内に下水道に接続しなくてはならない決まりになっているが、現実はそのとおりに直ぐに接続率が100%になるわけではない。
しかし、下水道の接続をできるだけ早くすることは、下水道特別会計の財政収支に著しく大きな影響を与える。年間に何億円という違いが出てくる。この点については、私の本にも触れているが、下水道早期接続支援システムというコンピュータソフトがあり、市民への下水道接続の働きかけを効率的に行い、早く接続してもらう工夫をしている。企業が使っている営業を効率的に行うコンピュータシステムの応用である。
(7) 迷惑施設の共同利用
それから、これは相当な反対があるものなので、よほど勇気と信念のある市長さんにしかお薦めできないが、ゴミの焼却炉や下水の最終処理場を自分の町だけでなく、周辺の町と共同利用することにして、建設費の借金の返済や施設のランニングコストについて応分の負担金を頂くことである。
全ての町に可能というわけではないが、多くの地方はこれから人口がどんどん減っていく。そうなると、ゴミの排出量や下水の処理量も減っていく。ゴミなどはリサイクルの促進やゴミ減量対策を本気で取り組むと、人口が変わらなくても相当に減る余地がある。横浜市役所はゴミの量を30%減らしたので、建て直す予定の古くなった二つの焼却炉をそのまま廃止することになって何百億円も浮いた。佐賀市の場合には、周辺の町のゴミを受け入れることによって建設費の負担なども市単独の場合よりも相当に楽になる。
ただ、これは、中田市長のような強い信念がないととてもできない。佐賀市役所では今は、周りの町のゴミを受け入れようという動きは全くない。なぜなら、住民の反発は相当のものだから。しかし、成し遂げることができるなら、効果は非常に大きい。最低でも、何億円の単位の効果が見込める。
このほかにも、空き瓶やペットボトルなどの資源ごみをできるだけ高く売る方法など、収入が増える方法が他にもいくつかある。
4. 歳出の削減策
さて、次の述べるのは、歳出の削減策である。
ここで注意しなくてはならないのは、@必要のない事業は廃止する、A市役所が行う必要がある事業でも、市の職員が直営で行う必要があるかどうかを検討する、B市の職員が行う必要のある事業であってもできるだけ効率的に行うということである。そして、A,Bの場合には、サービス水準は現状維持という前提を置いて考える。
以下に述べることは、いろんな自治体で行われていることであるので、簡単に述べる。
(1) 民間委託の推進
ラスパイレル指数が100を切りましたと胸を張っている自治体が多い。これは、給与を国家公務員と比較したものだが、比較の対象は一般職である。この中には含まれていないゴミの収集や給食の調理員などの現業職員は、国家公務員よりも二割、三割高い場合が非常に多い。
であるので、これらの現業職の民間委託はできるだけ早く進めなくてはならない。佐賀市では、学校及び保育所の給食調理員、学校用務員、土木作業・ゴミ収集等の現業職員、焼却炉の運転管理、保育園の保育士を民間委託することを決定していた。
ただ、その場合にも、委託する前に、効率的な体制は何人体制かということを民間のコンサルタントに分析を依頼するべきであると思う。でないと、非効率な仕事のやり方を前提として委託をしてしまうと、単に人件費分しか効率化されないことになる。
(2)幹部公用車の廃止
人口規模の大きな市の市長は、公用車があったほうが防犯と時間の節約になると思うが、それ以外の幹部や規模の小さな市の市長の公用車は廃止するべきである。金がないのなら、まず、自ら律しなくてはならない。
佐賀市の市長公用車は廃止した。タクシーか、一台ある黒塗りの12年以上経過した車を皆で共用していたので、それを秘書課の職員が運転することもあった。小さな町では、会議の場所に移動するのにも10分ぐらいしかかからない。それで十分である。
そのときも、議会や市民にも、市長専用車は必要だとの意見もあった。黒塗りの車は権威の象徴なのである。
(3) 現業職員の給与抑制
(1)で述べたように現業職員の職場を中心として委託を進めなくてはならないが、これには時間がかかる。同時並行して、ラスパイレル指数が高い現業職の給与を是正しなくてはならない。
(4) 一般職員の人件費の削減
これは、単に給与を下げるという前に、業務の効率化を徹底的に行って、人員の削減を図ることが必要である。拙著には詳しく書いたが、民間の経験豊富なコンサルタントに業務の分析と効率化策の検討を頼むべきである。
きちんと分析し、効率化策を導入すれば、これまで職員が行っていた仕事の相当部分が、廃止、嘱託職員に任せる、アウトソーシングするという結果になると思う。
このような作業と同時並行して、その地域の企業の給与水準と比較して給与を是正しなくてはならない。これは、給与だけでなく、退職金についても地域の企業の水準との均衡が必要であろう。
ちなみに、佐賀の場合では、地場の企業(九州電力やNTT、上場企業の支店等を除く)と比較すると、給与が高いだけでなく、退職金も著しく高い。
これ以外にも、公共工事改革や高金利の借金の借り換えなどがあるが、かなり長くなったので、次回にお話したい。
2006年10月14日
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