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2006年11月14日 |  最新版
2006年10月韓国訪問記 (3)
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10月19日15時30分から韓国国税庁を訪問した。韓国のe-TAXシステムである"Home Tax System"がなぜ成功したのか、その理由を探るためである。

日本の電子申告の利用は非常に低い。私も今年の三月に電子申告を利用して納税しようと思ったが、結局、領収書などを郵便で送付しなければならず手間がかかるので、郵便での申告で済ませた。

ところが、韓国では電子申告率が90%を上回っている。なぜそのような違いが生じたのか、是非、聞いてみたいと思っていた。

最初に以下のようにカン・ジョン・ファンさんから説明があった。ありがたいことに日本語のパワーポイントの資料を作成していただいていた。おそらく、日本からの視察者が多いのではないだろうか。

説明資料を希望される方は私までメールをいただければパワーポイントの原稿をPDFでお送りします。

1. 韓国国税庁担当者の概要説明

まず、以下のような概要説明があった。((注:・・)は、私のコメント)

(1) "Home Tax System"の概要

  • 2002年4月から電子申告(付加価値税等)、電子告知及び納付を始めた。
  • 2004年1月からは納税者が納税関連の証明書を、インターネットを通じて個人のPCでプリントして、公文書として使えるようになった。
  • 2004年3月には、法人税と所得税まで電子申告の範囲を拡大した。
  • 2005年5月には、小規模事業者を対象に「簡便申告方式」を導入した。
  • 2006年2月からは、過去の申告内容と納付内容を、インターネットを通じて確認できるサービスを開始した。

その結果、2006年7月の段階では、税理士の97.1%がこのホームタックスシステムを利用している。事業者の56%、453万人もこのシステムで直接申請してくることから、税理士に任せている人を加えるとほとんどの人がこのシステムを利用して電子申告している。

このシステムを利用しようとしている人は、電子認証が必要であり、それを取得していない人は、管轄の税務署に申請して認証を取得しなくてはならない。

税理士の利用が増えた理由の一つであるが、会社が使っている会計ソフトのデータを使って、電子申請に必要なデータに変換することも可能である。韓国内で発売されている商業用会計プログラムは、国税庁が提供したフォーマットにしたがっている。(注:ここでも標準化しています。凄いですね)

納税証明書の発行についても、自分の会社のPCから国税庁のシステムに接続して、納税証明書の発行を申請すると、自宅のパソコンで印刷が可能である。

(2) 普及の戦略

以下のようなことを行った。

1. ともかく使いやすくすることに心がけた。

  • システムにアクセスして、最初に納税者番号を入力したら、住民は住所、氏名などのものは入力する必要がないようにした。
  • コールセンターを設置するとともに、納付の時期には職員を増やした。
  • 納税者はインターネットで、過去の納付記録及び明細を確認できるようになった。

2. 電子申告を利用した方が得だと住民が思えるようにした。

  • これまでは税理士に相談していたような予想納税額を計算してくれるサービスを提供した。
  • 国税庁は売り上げをすでに把握しているので、住民がアクセスすると、画面に売り上げなどを自動表示し、住民はそれを確認すればよいだけにした。(注:納税者番号制度を導入しているため、金融機関の口座に計上されるものはほとんど把握しているらしい)
  • 電子申告を利用した人には、千円から二千円を割り戻すようにした。

3. PRを徹底した。

  • メールや新聞などを通じて、電子申告サービスの便利さをPRした。
  • 利用した人の意見を聞いて、システムを改造して、使いやすくした。
  • 電子申告の利用者が多い税務署を表彰するようにして、それぞれの税務署がPRに努力するように仕向けた。

4. 税理士と協力して進めることが出来た。

  • 韓国には8,500人余の税理士がいるが、電子申告を定着させるために大きな役割を果たした。
  • このシステム導入の初期段階では、税務署の担当者が会計士と個人相談をしながら対応した。そして、そのときに税理士から出た意見をシステムの改造にうまく反映させて、とても使い勝手のよいものにした。(注:この点も日本とは随分発想が違いますね)

(3) 質疑応答

この後、質疑応答の時間となった。

最初に質問が出たのは、個人のPCで税務証明を発行するシステムについてであった。どのようにコピーの防止をしているのかということだった。回答は以下のとおり。

  • まず、国税庁の印が、コピーすると赤から青になるようにしてある。これは、手数料収入を防止するためコピーガードをかけているため。

    個人が発行した税証明等をもらった人が、それが本物かどうかを確認する手段だが、証明書に確認番号がついているので、その番号を国税庁のホームページのインターネット証明書確認コーナーを開いて、その番号を入力すると証明書の内容が表示される。他にもホームページで画像を肉眼で確認する方法やなど五つの確認方法を提供している。

    使用するプリンターであるが、メモリーを残さない方式のプリンターでないと利用できないようになっている。対応可能なプリンターは国税庁のホームページに表示してある。
  • そこまでして確認するのなら、公用に使う証明書はそもそも要らないのではないかと質問があった。(注:日本では、税証明や住民票の写しなどの相当部分は他の行政機関に提出する必要があるので発行されています。無駄ですね)

    これに対しては、当たり前ではないかという顔をされながら、こう答えられた。

    「もちろん、行政機関同士であれば情報交換を行うので、税証明は不要です。しかし、民間が税証明を必要とすることがあるので、そのために発行しているのです」

    これには、参加者のほとんどが「ほー」と声を上げた。
  • また、詳しくは書かないが、携帯電話を利用して証明書の申請も出来るサービスを2005年12月から始めているとのことであった。
  • 日本との違いが他にもある。国税庁のシステムにアクセスすると、住民のPCにウイルスやスパイソフトがいないかどうかをチェックするソフトウエアをまずダウンロードする仕組みになっている。イーコーポレーション社の廉社長は、時々韓国国税庁のシステムにアクセスして自分のPCの安全性を確保しているそうだ。
  • また、税理士を通じての申請の場合には、税理士個人の認証があれば電子申請できるようになっている。日本の場合には、本人の電子認証までも必要とする。
  • 医療控除証明などのための領収証をどこまで添付するのか問質問があったが、これについては、添付しないでよいようになっているとのことであった。

サンプル調査を定期的にして、不正があったら厳しく処罰する仕組みにしている。

(注:これは、そもそも医療控除証明などの額が小額であるので、不正をなくすコストと手間を比較考量している。多少の漏れはあってもよいのではないかという割り切りがある。このような割り切りが出来るのも、基本的には、事業者の取引で金融機関を通すものは、納税者番号をつけてやり取りされており、ほとんど当局が把握しているからであろう)

3. 説明を聞いて私が感じたこと

このお話を聞いていて思ったのは、日本が電子申告を普及するためには以下の大きな点を乗り越える必要があるということである。これは他の電子申請の普及にも共通する。

(1) 電子認証を普及させること

まず、電子認証を増やすことである。ある地方国税局の総務部長にお話を伺ったときも、自治体がもっと電子認証を住民が取るように働きかけてくれないと電子申告は普及しないとこぼしていた。

日本では、公的個人認証発行枚数は2006年1月時点で約15万件である。韓国での公的個人認証が普及しているのには、いくつか理由があるが、それは民間の力をうまく利用したからである。

韓国では政府の電子政府化の政策が進む前に、民間の銀行が先行してインターネットバンキングを進めており、それに必要な個人認証局を立てて、電子認証を発行していた。2002年当時、銀行が発行していた認証書は約900万枚であった。(韓国の人口は4700万人。2006年7月時点での公的個人認証書発行枚数は1400万枚)

韓国政府は電子政府拡大の鍵は電子認証を普及させることであることを認識し、民間銀行の個人認証を国の公的個人認証書と交換するキャンペーンを始めたとのことである。

もう一つ大きな違いがある。日本の電子認証はICカードに格納されており、ICカードリーダーを個人が購入しなくてはならないが、韓国の個人認証はダウンロード形式で、パソコンに格納してもUSBに格納してもよいようになっている。

(2) マーケティングの意識を国税庁及び行政側がもつこと

その次に大事なことは、マーケティングの意識を国税庁及び行政側がもつことである。

どうやったら普及するかということについて、韓国国税庁のアプローチを見ると、利用者の側と意見交換をして、とにかく使いやすくする努力をしている。そして、電子申告をすると得するようにもしている。

(3) 100%を追求しないこと

そして、(2)の課題とも関係するのだが、100%を追求しないことである。徴税コストや利便性の関係から、医療費控除の際に医療機関の領収書は添付しないでよいよということにしてある。

そもそも、日本の税務署は、本当に一枚一枚領収書を確認しているのだろうか。私には、手間から考えるととても無理で、現実には、韓国がしているように全部でなく抜き取りしたものを確認するだけではないかと思える。

以上、二時間にわたって白熱したやり取りが交わされた。参加者もみな熱心で、実り多いひとときであった。

しかし、問題はこの後である。参加者は何らかの形でITにかかわっている。これらの人たちが、韓国国税庁のシステム導入で得たヒントを、日本のシステムをよくするためにどう動くのかということである。

私は、今後も、世の中にこのような事実があることなどを伝えていき、いずれの日にか政策提案をしたいと考えているが、IT業界があげて電子認証普及のための様々な政策提案をしてくれるとよいのだが。「よいお話を聞いたね。よかったね〜」で終わっては、何にもならない。

では、次回は、20日の江南区役所と前区庁長のクオン氏との懇談の様子などをお話したい。

2006年11月14日
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