木下敏之行政経営研究所 clear
財政が厳しい地方自治体の行政改革を、独自のノウハウでお手伝いします。
木下敏之行政経営研究所
clear
clear
clear
コラム :: バックナンバー
2006年11月26日 |  最新版
トヨタのDNAが注入された市役所
line

1. 「月刊ぷらざ」の連載コラムを掲載しました

最近、ホームページに、佐賀市で発行されている生活情報誌「月刊ぷらざ」に私が2001年から2005年まで連載していたコラムをアップした。全部で57本あるが、教育のことや子育てのことなどを書いており、改めて読んでみると、自分が教育問題に関心が強いのが良く分かる。

思い起こせば教育に関心を持つきっかけになったのは、2000年5月に発生した佐賀バスジャック事件であった。高校を中退した若者が佐賀発福岡行きのバスを乗っ取り、乗客一名を殺害した事件である。

この若者が佐賀市立の某中学校でいじめにあっていたとの話が出ていたのだが、当時の教育長は曖昧に答えるだけであった。当時の私も、教育は教育委員会に任せておくべきものだとの考えに縛られており、口を出さなかったので、事件も風化し、この事件から佐賀の教育は何の教訓も得ることが出来なかった。

教育の世界のおかしさはたくさん見てきており、「学級崩壊」だけでなく「保護者崩壊」をしたところもあり、問題はたくさんあるが、打つ手ははっきりしている。何も大げさな会議を開かなくても、きちんと子供たちの教育のベクトルを示し、実行に必要な人材と予算を重点的に投入することである。国の判断を待たずに都道府県の判断で直ぐにもできることばかりである。

2. 税金の有難さと大切さ

さて、自分の本を9月に出しているので、講演の際にお許しが出れば、講演の終了後に本を販売している。なかなか売りにくいテーマの本なので原稿料なしで何とか出版にこぎつけた経緯があり、本が売れても一円も自分の懐にお金が入ってくるわけではないのだが、物を売ることの厳しさと大変さを実感している。

一冊1470円。役人の時代にはなかった小売をやっていると、物を売ることは本当に大変だと思う。また、本が売れたときの喜びも感じることができる。

本を何冊もバッグに入れて運ぶのは重たいし、お釣りを準備していっても思ったほどに売れないこともある。100人以上もいて講演の受けも非常に良く、「今日は売れるかな?」と思っても全く売れないときもあるし、主催者から販売自体を遠慮してくれといわれることもある。逆に、少人数で反応が今ひとつのときに、予想以上に本が売れるときもある。

アマゾンの自分の本の紹介のページを見ていると、出版後直ぐに古本の販売も始まった。「美品です。1000円です」と書いてあるのを見ると、なんとなく頭にくるし、本を書いて生活する人が益々大変になったと同情してしまう。ブックオフで売れても、アマゾンの古本が売れても、著者には原稿料は一円も入ってこないのだから。これまでは、アマゾンで新品ではなく古本を買うこともあったが、自分で本を出してから後は、古本を買う気にはなれない。

話は横にそれたが、この本の販売を通じて改めて感じることは、税金というものがなんと貴重なお金であるかということである。

コツコツと販売した売上の中から税金が納められるのである。売れなかったら、税金どころか、自分と自分の家族が路頭に迷う。そのような貴重なお金の中から納められた税金を、納税課以外の職員がほとんど苦労することなく集められたお金を、まず首になることがない職員が使っているのである。

一円も無駄にはできない。行政は、常に効率化を追求しなくてはならないことを、肝に銘じなくてはならない。

3. トヨタのDNAが注入された市役所。豊田市役所での講演

さて、先週の17日に豊田市で講演する機会があった。豊田市、岡崎市、安城市、知立市の四つの市議会が西三河四市議会合同研修会を毎年一回開催しているのだが、その講師として呼ばれて行った。

議会相手に講演する機会もあるのだが、通常は、そこの市役所の行政が穴だらけなのでいくらでもしゃべることがある場合が多い。準備で困ったことはなかった。

しかし、今回の件だけは違った。会場が豊田市であり、豊田市議会の人たちもたくさんいたからだ。

なぜ豊田市では話しにくいかというと、日本でも有数のきちんとした行政を行っている自治体だからである。正直に言って、豊田市で話すことが見つかるだろうかと心配になった。

これまでもいろんな良い噂を聞いていた。豊田市の行政は、トヨタ方式を取り入れてものすごく効率化されていると。議員もトヨタ関係の人が多く、トヨタの経営が基準となって行政をチェックしていると。

調べてみると、財政力指数は1.7を超えており、平成16年度の佐賀市役所の0.73の倍以上ある。しかも、佐賀市役所よりはるかに早くから民間委託などに取り組んでいる。通常、お金のある自治体は、あまり行政改革はしていないのだが、そんなことは決してなかった。水道局を調べてみても、やはり人数がとても少なく、民間委託が進んでいる。

4.「カイゼン」のDNA

日経新聞が二年に一回発表している、全国市区行政革新度ランキングでも全国第五位だし、行政サービス度ランキングでも第13位である。豊田市の場合は、人口が増え続けており、このような基盤整備が必要な市が、あらかた投資の終わった東京などに伍してサービス度ランキングで上位に食い込むのはかなり大変なことである。

幸いなことに、市役所のHPが非常にしっかりしており、情報の入手は容易であった(もちろん、このHPにも改善点は見つかりました)。そこでいつもの講演の準備の三倍以上の時間をかけていろいろと調べてみると、やはり穴はあるものであり、講演の際にはいくつか提案することができたが(講演資料が欲しい方は、メールを下さい)、自分にとっても大変に勉強になった。

市の職員の方たちと話していても、どこか他の市とは違う。驚いたことに、職員提案は、年間6000件は出て来るそうだ。しかも昭和40年代から始まっていて、ここ10年でも毎年6000件以上の提案があり、多い年は8000件を越えている。佐賀市役所などはるかに及ばない数字である。

この「カイゼン」のDNAがどこからくるのだろうかと思っていたが、昭和40年代に三期12年間市長を勤めた方が、元トヨタの総務部長さんだったそうだ。このときに「カイゼン」のDNAが豊田市役所に注入されたものと思う。今の市長さんは、この人に相当鍛えられたそうである。

ここ数年で、いくつかの市役所が部ごとの目標管理方式を導入しているが、豊田市役所は何十年も前から部ごとの目標管理方式を導入しているそうだ。また、民間方式の人事評価システムの導入についても、地方自治体では県庁も含めてナンバーワンという評価がなされている。

前日の懇談のときに、「トヨタ方式で在庫を持たないようになっているところがありますか?」と私から質問した。例として、佐賀市水道局の無駄な在庫のことを説明した。佐賀市水道局の効率化の検討の際に、当時の福田水道局長が「不良在庫」と「過剰在庫」を発見した。

佐賀市水道局では、水道管の敷設業務の一部を直営で行っていたので、水道管やバルブなどの資材の在庫を抱えていたのだが、非常に過剰な在庫を抱えていたのである。5000万円以上の在庫を持っていた。そのうちの一部は、一年以上使われていなかったそうだ。また、資材のリストの管理も曖昧であったそうだ。

この話をすると、豊田市役所の人たちはぽかんとしていた。聞いてみると、とっくに業務を徹底的に民間委託しているのだそうだ。また、市役所の業務で、在庫をたくさん抱えているとこなど、どこもないという。

佐賀市役所もそうだったのだが、多くの自治体がいろんな不必要な資材や備品を抱えているのとは大違いだ。予算が余ったからといって年度末に大量の文房具を買い込み、死蔵している自治体は多い。

他にもここには書けないが、いろいろな効率化の手法を聞いた。杉並や三鷹のような派手さはないが、とても面白い、そして学ぶべき点がたくさんある市役所である。

やはり直接、そこに行き、いろいろと話を聞いてみるものである。よく、人からの噂だけでその人を評価してしまう人がいるが、とんでもないことである。豊田市役所の場合は、予想をはるかに上回る優れた点がたくさんあった。やはり噂ではなく、自分の目で確かめることが大切だと改めて思った講演であった。豊田市役所については、また、機会を作って是非教えを受けに行きたい。

2006年11月26日
up |  最新版
clear
HOME | ご挨拶 | プロフィール | 業務内容 | コラム | ブログ | 書籍・記事 | 行革Q&A | お問合せ
clear
clear